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盛岡地方裁判所水沢支部 昭和41年(ワ)41号 判決 1968年3月14日

主文

被告は原告に対し金九六七、四九七円及びこれに対する昭和四一年九月一三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は、原、被告間に生じた部分は被告、参加によりて生じた部分は補助参加人の負担とする。

事実

第一  双方の求める裁判

一  原告

主文第一項同旨及び「訴訟費用は被告の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言

二  被告

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決及び担保を条件とする仮執行免脱の宣言

第二  双方の主張

一  原告の請求原因

原告はつぎの交通事故により傷害を受けた。

(一)  発生日時 昭和四〇年五月二〇日午後八時

(二)  発生地  江刺市米里字中沢一七七番地三浦久方東方四〇メートルの市道中沢線道路上

(三)  事故車  被告所有の軽二輪車一岩た三二九号

(四)  運転者  被告

(五)  被害者の事情 当日原告は杉下部落佐藤辰夫方での田植えの手伝を終つて帰途訴外菊池慶治郎、同佐藤丑蔵、同中山健治、同平沢亀三郎と共に歩行していた際の事故であった。

(六)  事故の態様 原告が右四人の同行者とともに東に向つて歩いていたとき前方から被告の運転する軽二輪車のライトが、後方から訴外浅倉正雄の運転する原動機付自転車のライトが近ずいたので、訴外佐藤丑蔵と同菊池慶治郎は先へ急ぎ訴外中山健治と同平沢亀三郎と原告は道路右側の橋へ避けたところ、後方の浅倉正雄の原動機付自転車の通過後、被告の軽二輪車が接近し、被告は原告を避けようとしてハンドルを右に切つたが、そのとき原告の右前胸部に左ハンドルを衝突させ、橋の右側に積み重ねてあつた丸太に乗り上げて倒れ、原告は道路上に転倒して傷害を受けた。

(七)  傷害の部位程度 第一二胸椎圧迫骨折、左下腿打撲、右上膊神経麻痺で昭和四〇年五月二〇日から同年八月八日まで入院し、その後同年一〇月一九日まで通院治療をする傷害であつた。

2 被告の帰責事由

(一)  民法七〇九条の責任

当時被告は、水沢営林署米里担当区に勤務し米里公舎に居住していたが、その頃新らしい本件事故車を交付され、その試運転のお祝いに訴外千田寅之助方で飲酒し酩酊運転して事故を惹起したものである。

(二)  自動車損害賠償保障法第三条の運行供用者の責任

3 損害額(合計九六七、四九七円)

(一)  治療に要した費用合計金七七、四九七円

(1) 入院治療による来間医院への支払

計金四七、四九七円

(2) 入院当初一ケ月間の付添婦一日金七〇〇円の割合による計金二一、〇〇〇円

(3) 通院一ケ月間の自動車賃往復三〇〇円で計金九、〇〇〇円

(二)  治療期間中の得べかりし利益の喪失金一〇〇、〇〇〇円

原告は、農家の主婦で年平均毎月二〇日間の労働に従事していたが、一日の賃金は金一、〇〇〇円であるから一ケ月では金二〇、〇〇〇円の収入が挙げられるところ、五ケ月間の休業による損害

(三)  将来の得べかりし利益の喪失金七九〇、〇〇〇円

原告は事故当時五二才であつたから就労可能年数は一〇年であるところが、本件事故によつて普通の健康体の婦人の二分の一しか働けない状態となつた。

したがつて、一日金五〇〇円の損害とみると、一ケ月二〇日就労の一ケ年間では金一二〇、〇〇〇円一〇年間で金一、二〇〇、〇〇〇円の損害となるがこれをホフマン式計算法で計算すると現在金七九〇、〇〇〇円の得べかりし利益を失つたものということができる。

4 よつて、原告は被告に対し金九六七、四九七円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である昭和四一年九月一三日から支払ずみまで民事法定利率の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  被告及び補助参加人の認否

請求原因1の事実は否認する。もつとも、被告が原告主張の日時頃その主張の場所を軽二輪車を運転して通過したことは認めるが、つぎのとおり被告が原告に接触したことはない。

すなわち、被告は同日軽二輪車を運転し、江刺市道中沢街道を小里原方面から人首方面に向け進行中、原告主張の事故現場である江刺市米里字中沢一七七番地先にさしかかつた際、約四〇メートル前方の仮橋付近に四、五人の対面して歩行してくる人影を認め、さらにその背後から第一種原動機付自転車が対面して進行してくるのを発見したため、速度を時速約二〇キロメートルに減じて道路中央部を進行したところ、右歩行者のうち二名が急に進行方向の右側に待避したのでこれを避けるためブレーキをかけながらハンドルを左に切り、右仮橋に積載されていた丸太材に乗りあげつつ、左側(川の方向)に傾いて停車した。

その際前記対面してきた第一種原付自転車が通過して行つた。

被告が停車した際、原告は被告の停車位置よりさらに約三メートル前方に転倒していたものであり、したがつて、被告の運転する軽二輪車が原告に接触するはずもないし、その事実もない。原告が転倒したのは原告の背後から追い越して行つた前記第一種原付自転車を避けようとしたためと思われる。

請求原因2の事実は否認する。

同3の事実は知らない。

第三  証拠関係(省略)

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